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    宗田 聡 宗田 聡

    2015.06.16

    産婦人科医から妊活中の方へ - 知っておいてほしい、妊娠検査薬のメリットとデメリット
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    妊娠検査薬が一般に手に入って調べる事ができるようになったのは1992-3年の頃です。それまでは、病院に行かなければ、妊娠しているかどうかも知る事ができませんでした。よくテレビドラマで「妊娠してますね。おめでとうございます!」という台詞がありますが、今は自分自身で、薬局で妊娠検査薬を購入して、とりあえず妊娠しているかどうかを知る事ができてしまいます。

    そこで、今回はこの妊娠検査薬が手軽にできるようになったことの功罪についてお話したいと思います。

    そもそも、この妊娠検査薬はどういう仕組みで妊娠と診断しているのでしょうか?

    妊娠して受精卵が子宮の内膜に着床すると、その後、絨毛という胎盤のもとになるものができてきます。この絨毛からhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピンホルモン)という物質が分泌され、血液に入り、それが尿の中にも出てきて、妊娠検査薬はそれを検出して陽性の反応を示します。

    妊娠検査薬のhCGの検出する感度は、主に市販されている製品は50mIU/mLで、これは次の生理予定日、つまり排卵の約3週間後にはほぼ確実に検出することができます。

     

    早期の妊娠妊娠察知による「功」

    妊娠検査薬が一般に広く普及してくると、ごく初期の妊娠を察知できるようになりました。まず「功」ですが、その結果、大きく変わったのがショックを伴うような子宮外妊娠の激減です。20年以上前は、月に1~2例はショック状態の子宮外妊娠の患者さんの緊急手術をしていたこともあります。

    子宮外妊娠は全妊娠の0.5~1.5%に、体外受精による子宮外妊娠は2~3%発生すると言われていますが、近年はむしろ、クラミジアなどの性感染症の増加や体外受精・胚移植の普及により、その頻度は増加していると考えられています。では、なぜ頻度は増加しているのに重症の患者さんが減っているのでしょうか? それは、妊娠検査薬の普及によって、非常に早期に妊娠が診断され、さらに子宮外妊娠も以前より1~2週早く診断されるため、ショック状態まで行く前に早期診断治療が行われているからです。もちろん、子宮外妊娠も妊娠7~8週以降で診断されると、最悪の場合は破裂し、腹腔内出血を起こしショック症状が起こり、死亡にいたることになります。

    わが国の統計(厚生労働省、母子衛生の主なる統計)によると、子宮外妊娠による死亡は、 妊婦10万人あたり16.0人(1950年)→2.1人(1975年 )→0.4人(2000年)と、この50年間で40分の1に減少しています。ところが、アメリカでは1970年には10万人のうち死亡は350人で、その後20年間で死亡率は7分の1には減っていますが、日本と比較すると非常にまだまだ多くの方が亡くなっています。

     

    早期の妊娠妊娠察知による「罪」

    一方で、妊娠検査薬の普及によって、一般の方が次の生理が来るか来ないかの時点で、妊娠の可能性を知る事になります。もちろん、その時点ではまだ妊娠と確定したのではありませんが、一般の方の中には妊娠検査薬陽性がイコール「妊娠した!」と思ってしまう方もでてきます。

    しかし、妊娠8~9週頃に超音波診断で2cm前後のしっかりとした胎児が確認できる前までに、胎児の生まれつきの異常によって自然流産するケースも珍しくないのです。母体の年齢と初期流産は大きく関係していて、高齢になるほど流産も増えます。40歳で妊娠反応が陽性だった方の3人に1人は流産になります。

    妊娠検査薬

     [出所] 虎ノ門病院産婦人科 1989.1.~1991.7.データ、母体年齢と流産 周産期医学 vol. 21 no. 12, 1991-12

     

    最近は35歳以上の高齢妊娠の妊婦さんが4人に1人の時代ですので、当然、初期流産も増えてきているのが現状です。

    母体年齢別出生数割合推移

    [出所]  厚生労働省「母の年齢(5歳階級)・ 出生順位別にみた出生数」

    さらに妊娠検査が陽性になった直後、超音波診断で胎嚢の存在が確認できるなど臨床上の妊娠の所見がはっきりしてくるよりも前に、流産が起こる事もあり、このような流産を化学的流産(Chemical abortion)といいます。名前としては流産と言ってはいますが、おそらく昔であれば、妊娠を意識して早い時期に妊娠検査をしていなければ、おそらく通常の生理が来たと思って日常生活が過ぎ去ってしまっている方なのでしょう。それでも、「流産」という言葉で精神的にショックを受ける方も少なくないので、あまりに早く妊娠検査薬で「陽性」と知ってしまうのも、それはそれでいろいろな問題を抱えてしまいますね。
     

    宗田 聡
    ・所属/役職
       医療法人HiROO理事長・広尾レディース院長
       筑波大学大学院人間総合科学研究科
       筑波大学医学医療系非常勤講師
       首都大学東京健康福祉学部看護学科非常勤講師
     

    ・略歴/専門分野
       筑波大学医学部卒業後、筑波大学産婦人科講師、ニューイングランドメディカルセンター(ボストン)遺伝医学特別研究員、水戸済生会総合病院主任部長、茨城県周産期センター長を歴任。医師、医学博士。

    ・専門:産婦人科医
     ・周産期医療:出生前診断、胎児医学、遺伝医学、メンタルヘルス
     ・医療倫理
     ・医療IT
     ・女性医学(Women’s Health)

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